今日は仕事帰りに、フランス語を教えている私の生徒さんのコンサートに
行ってきました。 以前歌った 『ミニョン』 のティターニアのアリアが、ずっと上手になって嬉しい限り。 生徒さんというのは、思いがけない時にびっくりするほど上達するものです。 そこが教えるということの面白いところ。 聴きに来てくれた共通の友人や、お母様からも褒めていただいたので 私も嬉しかったです。 何より良かったと思ったのが、「とてもナチュラルな発音」 という友人のコメント。 そう。 発音というのは、とっかかりの技術にすぎなくて。 ナチュラルな、あなたそのままの声が出てくるように、といつも願っているのです。 もっともっと、丸く、つやのある柔らかい声をあなたは持っているのですよ!!! それを気づかせてあげたい、といつも思いながらレッスンしているのです。 しばらく前から、彼女の発音の問題は母音よりも子音にある
と思っていた。ちょうどそれを直すのに最適な箇所が出てきたので z の子音だけを取り出して真似してもらうと、思わぬ反応が出てきた。 え、こんな音なんですか?? 今までこんなの聞いたことがない。 そうよ。フランス人の音はこうです。 自分の声をこういうふうに聞いているんです。 今までと違うでしょ。 うん、気持ち悪い~~~。ぞわぞわする。 こわいの。だって、今までいつも、つかまるところがあって こことか、こことかにつかまって歌ってたのに (と言ってソファーの手すりやクッションにつかまる) これじゃ、どこにもつかまるところがないじゃない! いいのよ、それで。 ここにいる自分につかまればいいのだもの。 どうやら彼女の扉が何か、開いたようだった。 彼女が何かに頼るのをやめ、何かを手離して 自分の歌が歌えるようになる日が近いのだろうな、 と私は思った。 翌週訪ねてみると彼女は、今まで教えたことをしっかり咀嚼して 丸く穏やかで、とがったところのない優しい歌が歌えるようになっていた。 表面上ではない、奥にしまってある彼女の良さがいい具合に現われている歌。 他の曲になるとまた元に戻っちゃうのがご愛嬌だけれど そのうちどんな曲にも応用できるようになるでしょう。 ちょっと発音を直しただけなのに。歌って面白い。 Dさんとは、フランスもののオペラ・アリアのお稽古をしてきたのだけど、
今度小さなサロン・コンサートで歌うことになったので、歌曲の方も 勉強をはじめた。 今日は時間もなかったので、言葉の説明は飛ばしてひとまず、 口伝えにワンフレーズずつ発音を真似してもらう。 声楽家の人は、意味を教えるより前にこれをやった方が 上達が速いのです。 ひと通りやってみたあとで、うっとりした顔を上げた彼女いわく、 D 「う~ん、なんかすごくフランス語っぽいわぁ」 V 「そうね、なかなか上手になったじゃない。辞書引いてきたときより この方が上手よ」 D 「ううん、私の発音じゃなくて、歌詞がね、オペラのときより ずっときれいでフランス語らしいよね。 やっぱり歌曲って詩だからかなぁ」 V 「ああ、あらすじが展開する台本じゃなくて、詩だからってことね」 D 「そうそう、この曲はすごくうっとりする感じで、 こっちの曲の方は軽く楽しい感じがする」 詩の内容を何にも説明していないのに、その言葉の美しさを 感じとれる、ってやっぱり音楽家の感受性はすごいと思ったし、 詩というものがもつ力を改めて実感したのでありました。 どんどん、上手になってね、Dさん。 昨日は私がフランス語の発音を教えている生徒さんの発表会でした。
お教えした約束事をひとつずつちゃんと守って歌っているのが分かって 生徒さんの成長ぶりは私にとっても嬉しいことです。 生徒さんの声を聴きながら身体を見渡して、必要な箇所にちょっと手を添えてあげたり 指で押さえるだけで、ずっと楽に歌えるように、発音できるようになる。 人間の身体って、声って、とても不思議なものです。 独自の方法論を確立して自信を持ってはいても やはり、どの程度役にたっているのかな? と半信半疑のところもありました。 でも今回、発音トレーニングをしている歌い手さんと、していない歌い手さんとで これほどまでに顕著な差がついているのを見ると、 これはできるだけ多くの歌手に学んでほしい技術だなあと思います。 大切なのは、教えたいことは山ほどあるけど、言うべき時期が来るのをじっと待つこと。 私の歌い方を押しつけないこと。 彼女たちがどう歌いたいのか、どこを問題に感じているかを汲みとり それに対して何をアドバイスできるか考えること。 私が示すのはひとつのモデルであって、藝術家である彼女たちは 自分たちの創造性でもってこのモデルをいつか乗り越えていくということ。 プロフェッショナルに対する敬意を払うことが大切、と思っています。 これでひと区切りついて10月もおしまい。 明日から11月。さあどうやって過ごそうかな。
翻訳業務のかたわら、声楽家のためのフランス語発音レッスンをしています。
フランス語の発音は日本語にない音が多いので難しい。 先日、ある声楽家の女の子が、目を白黒させながら練習しているので 「Dさん、いま、ああしよう、こうしよう、いろいろ考えてるでしょ。 何も考えないの。何もしないの。」 と私。 なにげなく言ったことだったけど、どうやら声楽のテクニックで 思い当たるふしがあったらしく、急にらんらんと目を輝かせ始めた。 「今の説明すごくよく分かりました!」 私は発音の仕方なんかなーんにも説明してないんだけどネ(笑) あなたが自分でコツを発見したのよ。 目的意識を持っているひとは、ちょっとしたことで ぐん、と伸びていく。 その瞬間に立ち会えるのはとても嬉しい。 そういう生徒さんにこれからどれだけ出会えるか。 その瞬間をどれだけ発掘できるか。 私自身がすごく試されている気がする。 10年前からあたためてきた構想を、今少しずつかたちにしていくのは とてもわくわくすること。 それは、何語ともつかない曖昧な 「音」 を 少しずつ 「フランス語」 のかたちに仕上げていく面白さと どこか似通っています。 < 前のページ次のページ >
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