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ベルリン天使の詩
昨日BS放送で 『ベルリン天使の詩』 を放送していましたね。

ベルリン・天使の詩
ブルーノ・ガンツ / 東北新社
ISBN : B000EGDDLI




ヴェンダースってほんと、はにかみやで優しい眼差しの監督だなぁと思います。
天使がたくさん集まって、図書館にいる人々の考えをのぞいている場面が好き。
電車の中や会社、雑踏の中で、今この空間にいる人たちの考えていることが目に見えたら面白いだろうな…と私もよくあれこれ想像したりします。
小さいころは、どうしてそれが目に見えないのだろう、と思っていた(笑)。
今あるものとないもの。ないものは目に見えないのかどうか。あってないもの。たしかにあるのに見えないもの。
「par regret de quelque chimère absente 何か不在の幻想を惜しんで…」というのは、あるフランスの作家の言葉なのだけど、この映画ってまさにその不在の幻想 chimère absente を描いているように思います。

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不在の幻想。似たような言葉つきの文章によく出会う。どうやら私はそれを探して本を読んでいるらしい。

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流されながらも、いま自分がどこを流れているのかはっきり見ようとする文章で綴られた小説だ。黒々とした夜の目玉のような小説。「ない」と「在る」が、触れるか触れないかの距離で擦れちがう。はっとしてページから目を上げるとき、胸奥の巣穴からなにか飛び出す。駆け出す。追う隙も与えず消え去る。吸いつくような文章が知らせる。不在すら幻なのだ、と。
(「胸奥の巣穴に棲むもの」 『空を引き寄せる石』 蜂飼耳)


死角とはよく言ったものだ。死んでいる角に時間は流れておらず、しかもそこには誰もいない。誰かがいるとしたら、それは不在の誰かとの関係のなかで生じた影でしかないのだ。たとえば彼と妹との、あるいは彼と大家とのあいだの。
(『河岸忘日抄』 堀江敏幸)
by veronique7 | 2007-05-16 00:34 | 映画


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