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メランコリー展
先日日本から出張でいらしたお客様を展覧会にご案内したのですが
「ああこんなところにマックス・エルンストが!ベックリンが!ボッシュが!なぜ素通り?!」
と内心叫びながら、ゆっくりしたいのをふりきってお客様について歩きました。
説明はせにゃならんし見たい絵はじっくり見られんし…嗚呼。

というわけでマイペースにじっくり見るため、再度グラン・パレの展覧会
メランコリー 西洋の天才と狂気 に行ってきました。

古代ローマの遺跡にすでに見られるメランコリー。
神学によってメランコリーが罪悪と判断された中世。
古代の再評価とともに復活したルネッサンスのメランコリー。
天文学 (ていうか占星術にちかいですな) や音楽、精神医学との関連。
ニーチェによって 「神は死んだ」 と言われた後、近代が見出した
自然のなかのメランコリー。
そして現代人の言いようのないメランコリー。

こうしてさまざまな切り口から見てみると、
「頬づえをついてうつろな眼をしている人の絵」
というのが西洋の歴史のなかで繰り返し描かれてきたことがよく分かります。
あっぱれ、ジャン・クレール氏。(この展覧会の企画者)
彼はピカソ美術館館長でもありますが、見る人がよく分かるように
配慮が行き届いていて、ピカソ美術館の作品の並べ方とよく似ています。

途中、音楽との関連のところでヴィヴァルディの音楽が流れていて
数日前に見たラース・フォン・トリヤーの映画 "Manderlay" で使われていた曲と
同じだったので、あまりの偶然に仰天してひっくり返りそうになりました。
(映画のことはまたのちほど。)
展覧会にあわせて作られたコンピレーションCDがあったので
さっそく買ってしまう。

展覧会の最後にシャルル・ペギーの言葉が書いてありました。
(…うろ覚えでごめんなさい。クローデルだったか
シャルル・ペギーだったか、そのどちらかです)

「宗教は死といかに向き合うかということを教えた。
メランコリーは老後といかに向き合うかということを教える。
現代は老後の世界、年金生活・老人ホームの世界である…」

このほかにも作品に合わせていろいろな引用がしてあって
見学者が熱心にメモをとっているのが興味ぶかかったです。
誰しも本当は自分のもやもやに向き合い、手がかりを得たいのだろうな、と思う。
日本でも、素材は西洋絵画でなくてもよいけれど
こういう展覧会があればいいなと思った。
by veronique7 | 2005-11-26 05:42 | 展覧会


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