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ミロの無垢
再録です。(2004年6月19日)

前回、ミロの絵は無垢であるとなにげなく書いたのだけど
それってどういうことなんだろう、とずっと考えていた。

ミロの絵はすぐれて絵画的である、ということなのかなと思う。

絵画を絵画的である、といってみたところで説明にはならないが
ブンガク的でない、ヒヒョー的でない、ということ。

多くの藝術家が好む神話だの、いろいろな物語だのの
西洋の文化的背景とは無関係に、ただミロはミロの絵を描いた。
という感じ。

古典を消化しようという欲がない、ということなのかな。
それが無垢っていうことなんだろうか。

古典を乗り越えるために批評精神を持たずにはいられない、
過去をさかのぼるという時間の流れを織りこまずにはいられない、
そういう近代の翳り、みたいなものが
ピカソやマチスの絵には感じられて、そこに
ある種の精神の成熟を思ってわたしは圧倒されるのだけれど
それがミロには感じられない。

かといってミロの絵筆が未熟だというのではなく
丹念な習作の跡がきちんと残っている。
成熟の拒絶、というわけでもない。

クロッキー帳かなにかに青い絵の具があっさりと塗ってあり
「これが僕の夢の色です」
と楽しげな筆跡が踊っていた。

ミロはこの青い色をくりかえしくりかえし使って
見る者の心をきれいに洗いあげ
生まれたばかりの無垢にかえしてしまう。

なんなのだろう、この無垢って。
by veronique7 | 2004-06-19 22:15 | 展覧会


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